備忘録ブログ。
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奇跡のリンゴ3
category: おすすめ | author: オオケン

人は生きていくためには、経験や知識は欠かせない。



だけれど、



新しい”何か”をしようとしたとき、



最大の壁となるのが、皮肉にも、”経験”と”知識”である。






1985年7月31日...夕刻




リンゴ農家の木村の畑




無残に荒れ果て、800本ある木村のリンゴの木は枯れかけていた。




つまり木村は、リンゴの無農薬栽培を始めて6年間、




たった一個のりんごも収穫出来なかった





この年、木村の畑以外の、



青森県のリンゴは大豊作だった





木村は、このとき、もはや考えられることのすべてをやりつくしていた。



しかしリンゴの木は衰弱し



借金は山のように、農機具は手離し





木村は、



リンゴの箱を軽トラックの荷台にくくりつける為のロープを引っ張り出すと、



リンゴ畑の間の道をてくてく登り始めた。




このときの木村は、まだ30代だったが、もはや老人のような顔になっていた。




木村は死ぬことにした。



”すべての原因は自分。”



”自分が死ねば、すべてを終わらせることが出来る。”



”そんな簡単なことに、なんで気づかなかったんだろう。”



”この世に生まれた意味を、自分は果たせなかった。”



”ならば、これ以上生きる意味はない。”



”悔しいとか、無念とか、怖いという思いはどこにもなかった。”



”やることは、すべてやった。”



”これ以上すべきことはもう何もない。”



”生きていても、家族に迷惑をかけるだけだろう。自分がいなくなれば、



 みんな、今よりは幸せになれるに違いない。”





木村は、死のうと思った途端、不思議とおだやかな気持ちになっていた。



夕闇迫る道を、足どりも軽く登っていった。




誰にも見つからないところまで登っていって、そので死のうと思った。





ふと振り返ると



弘前の夜景が眼下にひろがっていた。



下界では、ちょうどねぷた祭りの前の晩だった。



二時間ぐらい登ったところ、



ちょうどいい具合の木が見つかった。



”よし、ここにしよう。”




木村は持ってきたロープを枝に投げた。








クライマーズ・ハイという映画があった。




実話に基づいた映画。




満員のジャンボジェット機が墜落した未曾有の大惨事。




墜落した山のいただき、飛行機は 


もはや原型を留めていなかった。




そんななか、




自衛隊のヘリコプターが、


ひとりの少女を救出するシーンが映し出される。



そう、



必要とされる人間は、



たとえ飛行機が墜落しても死ぬことはない。




りんご農家の木村は、



死を覚悟し、ロープを持って一人岩木山へ登ってゆく。



二時間ほど山道をのぼり、



死に場所を見つけ、



ロープを枝に向かって投げた。



そのロープ



木村の指をするりと抜けて、勢いあまってあらぬ方向へ



木村が、気を取り直して、ロープを拾いに行くと






月下に、一本のりんごの木が凛として立っていた。



なぜ、



山奥に、



こんな場所にリンゴの木があるのだろう




木村は死ぬ前に幻を見ているのかと思った。



近づいて、じっと見つめても、幻は消えなかった。



その美しいリンゴの木は、のびのびと枝を伸ばし、

枝にはみっちりと葉を繁らせていた。



木村は、



”こんな山奥まで、誰がいったい農薬をまいているのだろうと不思議におもった。”




でも、こんな山奥まで、たかだか一本のリンゴの木に農薬をかけに来るものはいない。



そこまで、考えて



木村の脳裏に一筋の光が見えた。



ふと、我にかえると、リンゴの木だとばかり思っていた木はどんぐりの木だった。



どんぐりの木ではあるが



このどんぐりの木



虫に食われた後がない。



病気で変色した葉もほとんど見当たらない。



健康そのものだ。



どんぐりの木の周りを見ると



雑草は生い茂り、



ムシもぶんぶん飛んでいた。



なのに、なぜ、



この、どんぐりの木は病気にならないのだ?




木村は悟った。



”森の木々は、農薬など必要としていないのだ。”



”森の木々の方が、木村の畑よりもはるかに雑草が生い茂り、害虫が要るはずなのに、



 なのに害虫を寄せ付けない力強さを持っている。”



”いままで、どうして自分はそのことに気づかなかったのだろう。”




木村は、夢中になって足元の土を掘った。



土はほろほろと崩れ、いくらでも素手で掘ることができた。



草を引けば、土のついた根っこがそのまま抜けた。



こんなにやわらかくて温かい土に触れるのは初めてだった。



手についた土の匂いをかいで見ると、ツンと鼻を刺激した。



”このやわらかな土は



    人間の作ったものではなく、自然のつくったもの”




”この場所に住む生き物すべての合作。”



”落ち葉が積み重ねられ、それをムシや微生物が分解して出来た土。”





今まで、



木村は、自分の畑のリンゴが実らないのは、



無農薬栽培をしたことで、



ムシや病気が発生したためだとずっと思っていた。




しかし、原因は、



まったく逆だった。




木村は言う



”自分は農薬の代わりに、ムシや病気を殺してくれる物質を探していただけだった。



 肥料をやり、雑草を刈って、リンゴの木を周囲の自然から切り離して



 栽培しようとしていた。



 雑草を生やしていたのでは、リンゴの木の栄養が奪われてしまうと思っていました。



 わたしは、リンゴの木とはなんなのかを考えてこなかったんです。



 つまり、


 

 農薬を使わなくても、農薬を使っているのと同じことをしていたのでした。






木村は、死にに来たことなどすっかり忘れて、




自分の畑へ向かった。




土を掘ってみた。



思ったとおりだった。



木村の畑の土は、とても硬くて、そして冷たかった。




”雑草は今まで敵だと思っていた。”



”雑草を刈るのはリンゴのためだとずっと思っていた。”



”肥料もそうだ。”



”山の木は肥料など一切もらっていないのに元気だ。”



”人間が施す肥料は一時的にしかきかない。”



”だから毎年施さなければならない。”



”そうやって、育てられたリンゴの木は、甘いお菓子を好き放題に与えられた子供のように、



 必要な養分を求めて地中深く根を張る努力をしなくなってしまうのだ。”




”木を見て、森を見ず。”だった



”わたしはリンゴの木しか見ていませんでした。”




この後、



木村のリンゴ畑がどうなったかは、想像通りです。



木村のつくるリンゴは収穫の前に予約で完売となる。 




「リンゴの木は、りんごの木だけで生きている訳ではない。



周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。



人間もそうなんだよ。



人間は、そのことを忘れてしまって、



自分独りで生きていると思っている。



そして、いつの間にか自分が栽培している作物も、



そういうもんだと思い込むようになったんだよな。



農薬を使うことの一番の問題は、




ほんとうは、そこのところにあるんだよ」




・・・・・そんなお話でした。

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